さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】


先生大きいのに…

強くて怖くて、

たのもしくて…




それなのに、


肩を小さく揺らしながら

涙を流していた。



…どうして?




「…せん…せい?」





「俺、今教師になって一番嬉しかったかも…」





ゆっくり振り向いた喜多先生は、照れ臭そうに涙を拭った。




「はい、ごほうびにより甘くしといたから!」


先生はマグカップを片手で2つ持って、奥のソファへ移動した。




「昨日はごめんなさい。私、もう夜遊びしません。」


背筋を伸ばした黒髪の私を見て、先生はかすかに微笑みながら、大きくうなづいた。



一口コーヒーを飲んだ先生は、少し苦そうな顔をして、私のマグカップと交換した。



「どうした風の吹き回しだ?そんなに俺が怖かった?」


違うよ。


私、先生が好きだから…


ただそれだけだよ。



< 23 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop