さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】
先生大きいのに…
強くて怖くて、
たのもしくて…
それなのに、
肩を小さく揺らしながら
涙を流していた。
…どうして?
「…せん…せい?」
「俺、今教師になって一番嬉しかったかも…」
ゆっくり振り向いた喜多先生は、照れ臭そうに涙を拭った。
「はい、ごほうびにより甘くしといたから!」
先生はマグカップを片手で2つ持って、奥のソファへ移動した。
「昨日はごめんなさい。私、もう夜遊びしません。」
背筋を伸ばした黒髪の私を見て、先生はかすかに微笑みながら、大きくうなづいた。
一口コーヒーを飲んだ先生は、少し苦そうな顔をして、私のマグカップと交換した。
「どうした風の吹き回しだ?そんなに俺が怖かった?」
違うよ。
私、先生が好きだから…
ただそれだけだよ。