さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】
「能見も、もう3年になるんだなぁ!早いもんだ。」
今日は英語の訳を教えてもらいにこの部屋に来ていた。
「入学式で、お前は一番やる気のない顔をしてた。」
驚いた。
喜多先生は、私が喜多先生を知るよりも前に
私のことを知っていた。
そして、その通り私は入学式の日に、高校を辞めようかと思うくらい面白くなかった。
何もしたくなくて、
勉強も嫌で、高校に通う意味がわからなかった。
あの日、そんな私の心の中の叫びを
聞き取ってくれている先生がいたなんて…
「私、辞めなくて良かった。こんなにいい先生に出会えたんだもん!」
最近の私は、素直に自分の気持ちを言えるようになっていた。
これも、間違いなく
喜多先生のおかげなんだ。