さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】
生徒指導室は甘い香り
喜多先生の印象…
あれは入学式。
何度注意しても話を止めない生徒を
体育館から連れ出した。
怖い先生。
あいつには気をつけよう…
そう頭の中にインプットされていた。
とにかくでかい。
身長は182センチ。
その割に細身。
硬そうな髪質で、ちょっと癖がある。
生徒指導室にいるせいか、なかなか接点がなかった。
時々校門で喜多先生の姿を見たが、
スカート丈のことを言われるのを恐れて、なるべく避けて通る。
きっと、私の名前もクラスも何も知らないはず…
なのに…
どうして!!
「おい、能見!話あるから生徒指導室まで来なさい。」
名前知ってんの?
私、喜多先生に習ったことないのに。
背の低い私に覆いかぶさるようにして、182センチの先生が私を見た。
「覚悟はできてる?」
そう言って、先生は私の見たことのない笑顔を見せた。
この人…
もしかして、怖くない?
誤解されてるだけで、実は優しい人なのかも知れない。
そう思ってしまう笑顔だった。