さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】
今から5年前の卒業生のアルバム。
「うわ!!!先生じゃん!」
パラパラとめくった最初のページに喜多先生を見つけた。
ドキドキした。
私の知らない先生がそこにはいた。
髪が今よりもかなり短くて、もっと怖い顔をしていた。
刑事のような鋭い目。
体はやっぱり大きくて、ジャージを来ている写真もあった。
そっか、先生は保健体育の先生だっけ。
つい、『生徒指導の先生』って思ってしまう。
もっといろんな先生を知りたい。
私の知っている先生はほんの一部で、
まだまだ知らないことばかり。
あと1年しかないけど、
あと1年、精一杯『先生の生徒』でいさせてね。
決して告白なんてしないから!!
だから安心して私を面倒みてね。
喜多先生は30分経っても、戻ってこなかった。
何があったんだろう。
私は変な胸騒ぎを感じながら、学校を出た。