さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】
もう外は暗くなっていた。
廊下の電気がチカチカして消えそうになっているのを見て、軽々と電球を取り替えた。
喜多先生、かっこいい。
しかも、優しいし…
私、惚れちゃった…??
でも、大事なことを忘れていた。
「喜多先生って結婚してんの?」
先生は、古い電球を腕に挟みながら、きょとんとしたかわいい表情でこっちを見た。
「お…俺ですか?」
答えを聞くまえに、私の心の中は決まっていた。
…どんな答えでもこの気持ちは消せない。
私は、先生のことを好きになってしまった。
薄暗い廊下をゆっくりと歩きながら、先生の顔を見上げた。