あなたを好きになってもいいですか?―初恋物語―
「雨、止みそうにないなあ」

霧島君が机に肘をついて、ぼそっと独り言のように口にする

「結構、雨脚が強いよね」

私は窓に目をやり、濡れた窓ガラスの滴を眺めた

図書室のほうが外より明るいせいか…窓がまるで鏡のようになっている

同じ窓の枠内に、私と霧島君の顔が並んで映っている

まるで夢を見ているみたい

私の隣に霧島君が座っていて、一緒に窓を見ている

「園崎ってさぁ。もしかして傘がねえの?」

「え?」

「だっていつもより帰りが遅せえじゃん。傘、ねえの?」

私は振り返って霧島君の顔を見た

『いつもより』って?

私が毎日図書室で勉強をしているのを知っているの?

「傘、ねえの?」

霧島君の三度目の問いかけで、やっと私はコクンと頷いた

「ちょっと待ってろ」

霧島君が、席を立つと図書室の奥へとズカズカと進んで行った

私はそれをじっと目で追った
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