あなたを好きになってもいいですか?―初恋物語―
保健室で、大量に血を出していた霧島君のことだから、きっと頭にぐるぐると包帯を巻いて処置室から出てくるのかと思ってた

いざ、処置室から出てきた霧島君は、瞼の上に分厚いガーゼをテープでぺたっと固定しただけのさっぱりした状態で出てきた

「先生、終わった。四針縫って、眉毛も剃られた」

腫れぼったい顔の霧島君が、傷口の上にある額をポリポリと掻いていた

血だらけだった霧島君の顔が、綺麗になっている

シャツや大きな手についている血は乾いて、まるで何かの模様みたいになっていた

「んじゃ、霧島、帰っていいぞ。園崎、途中まで送ってやってくれるか?」

「あ、はい」

私は読みかけの本にしおりを挟むと、鞄の中に捻じ込んだ

自分の荷物と、霧島君の荷物を手にとってから立ちあがった

「ああ、いい。俺、一人で帰れるから」

霧島君が、私が持っている霧島君のスポーツバックをひょいっと受け取った

「でも怪我しているから…」

「麻酔効いてて、痛くねえし。金持ってねえから、定期が使える駅まで歩くから」

「ええ? あんなに血が出てたのに、歩いて? 無理だよっ」

「今まで、帰れてたし。今回だって平気だろ。これくらい」

これくらい? って言えちゃう怪我だった?

私は目を丸くすると、スタスタと歩いていく霧島君の背中を見つめた

なんてタフな人なの?

ここから駅までタクシーで帰ったっていいくらいの怪我をしているのに、最寄駅まで歩いていくなんて…

私はハッとすると、小走りで霧島君の隣にいった
< 8 / 114 >

この作品をシェア

pagetop