あなたを好きになってもいいですか?―初恋物語―
「何、考えてるの? 怪我したんだから、タクシーで帰っていいくらいなんだよ?」

「あー、金ねえって言ってんじゃん。無理ムリ! タクシー代払うくらいなら、歩いていくって」

霧島君が苦笑しながら、手を左右に振る

「タクシー代なら、私が出すよ。それくらいなら持ってるし」

「なら園崎が、タクシーで帰れって」

「霧島君もそれに乗って…」

「ワリカンにする金もねえんだよ」

「ワリカンじゃなくていいって」

「そういうわけにいかないっしょ。俺、一応男だし」

「その前にけが人でしょ?」

「園崎、俺さ。『怪我人』って言われるほどの怪我なんてしてねえよ。裁縫の最中に、指に針を刺しちゃった程度の怪我と一緒。ちょこっとの怪我ぐらいで、騒ぐなって」

霧島君が、にこっと笑って「気にすんな」と付け加えた

気にするよ

血を流して保健室に駆け込んできたのを、見てきているのに

病院で、何針も縫った怪我と、裁縫中に刺した針の怪我とじゃ、全然違うと思う

「…なら霧島君と駅まで歩く」

「は?」

私の発言に、霧島君は驚いたのか、足を止めて私の顔を見てきた

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