阿修羅
兄が部屋を出ていくと、私はさっそく部屋に飛び散った血痕を拭き取りにかかりました。
まず、タンスからタオルを何枚か出し、海のようになった床に落としました。
吸水性がよく、見る間に血を吸い取ります。
それをビニール袋に入れると、濡らしたタオルで残りを拭きました。
フローリングで助かりました。

それから、ベッドの天井、手すり、梯子なども丹念に点検して、完璧に掃除します。

午前3時でした。



光に照らされると、豊かに実るオレンジのように輝く、栗色の髪を、2つに分けて三つ編みにしました。
それから、山吹色のセーターに、白い長スカートに着替えました。
鏡を覗くと、いつになく頬に赤みが差して、美しくみえます。

ヘアピンは、兄様に買ってもらったイチゴのをしよう。

階段を降りて、血で汚れた手を洗うためにバスルームに向かうと、時おり鈍い音が、床をつたって響いてきました。
きっと、男の身体を解体しているのでしょう。

「大きなゴミ袋を持ってきてくれ。黒いやつを、2つだ」

私は、台所から頼まれたものを持ってくると、兄にその旨を伝えました。
その袋を入れる鞄も必要だと言ったので、私は、母が修学旅行のために用意してくれた、大きなスポーツバックを出しました。

「ありがとう、助かるよ。じゃあ、母さんを起こさないように、玄関で待っていてくれ。僕も、すぐに行く」

そう言った兄の声音は、恐ろしいほどに穏やかでした。
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