あの頃のきみに
「薫ー!入学式始まるよ~。」
『うぁー!待ってよー!』
多田 薫。高校生になりました。
親友のさくらと絶賛猛ダッシュ中です。
「も~。薫が時間に遅れるからだよー!?」
『ごめんって!ねぇ、今日の入学式って何時に終わるの?』
「さぁー?なに、またあそこ行くの?」
『まあね。』
そういって空を見上げると、青く澄みきった空に桜が散っていた。
(あいつも今日入学式かな…)
あいつ、島崎 翔と離れてからはや1ヵ月。
『あの日以来、か…』
「薫どうしたのー?」
『なんでもなーい!』
―――――――――――――
「本校に入学したからには――」
『ねむいー…。トイレいってこよ』
そういって薫は体育館を抜け出した。
『ふー…。あいつのこと思い出すなんて、今日はちょっと変だな、自分。』
あいつのことは考えない…と呟きながら階段を降りたその時だった。
『えっ…。うわっ!』
自分のからだが宙に浮いた気がした。
「あの頃のあいつに会いに行く――?」
そんな声をききながら。