エゴイスト・マージ
醒ちゃん、群抜いて浮いてたなぁ
不器用とかいうんだったら
未だ救いあるんやけど施設入って何年も
喋ったりすること無かって
皆が騒いでいても無表情でまるで
人形みたいに完璧心閉ざしてて
たまーに俺ら見えてないんちゃうかと
思ったことすらあるくらいやった
周りに関心が無いというか
他人なんかどうでもよかったやろうな」
「……アイツの親の事知ったんは
相当後や
無論、本人から聞いた訳ちゃうで
色々下世話なヤツおってそういう噂って
どうしても耳に入ってくんねん
かなり酷い目あってたみたいや
……俺らが思う以上に」
「髪、最初見たとき驚いたろ
アレかて多分もとは……」
「虐待の、せいですか?」
「或いは……いや、あくまで推測」
「どないな仕打ちを受けても
子供ってのは世界が限られてる
結局、親しか頼りがない」
「……そういう俺も似たような
境遇やったから感じるんやけど、
やっぱな子供ってさ愛情とか
ちゃんと貰って育ててもらわんと
何か大事なモン欠けるんやて
身体ばっかり大きいなっても
心が追いつかへんっていうか
醒ちゃんに出会ったとき俺は
もう大分落ち着いてた頃やったから
時期が良かったんやけど……
ズレてたらと思うと今でも怖いわ」
感情の起伏が少ないって元にはあるけど
愛情とかそういった類に極端に
疎い
いや意味も価値もないって
少なくとも醒はそう思とる
母親……アイツに言わせると”魔女”か
全ての元凶はそこやな
蔦さんは遠目にその状況を
思い描いてるようで紫煙を吐きながら
薄っすらと目を細めた
「人生って人と比べるような
モンやないって言うけど
ホンマやろか?
人と自分を比べん人とかおるんかなぁ」
「……」
「小学校の頃、たまにな親が
迎えとか来るやんか手を繋いで帰る光景を
アイツが不思議そうに
見ていたのを覚えてるわ」
「俺達のいた施設、割とまともなで
規模が小さい分、結構子供達を
親身になってくれる人が多かった
だけど所詮は他人なんや
自分一人だけが独占できない
親とは非なるもの
子供だから分かる
そういう事には大人より鋭敏だからな
たまにさ、夜中泣く子もいて
”おうち帰りたい”とかね
一体どこに帰るっていうのか
俺ら、帰るトコなんか何処にもないのに」
「皆な色んな理由で泣くんよ
普段勝気な子も、
見えんとこでこっそりとな
やけど、醒ちゃんが泣いたトコ
見たこと無いねん
小学校の位からの付き合いで
ただの一度も
周りの大人は強い子やと言ってたけど
言うたかて、たかだが子供やで?
そんなんあると思う?
俺には泣き方を知らんように思えたわ
誰もアイツに笑うことも怒ることも
教えてくれなかたんやろうって