エゴイスト・マージ

「その人振られたとか?]

「ううん。
相手の人がきっと告白しても
眉一つ動かさないような人だから
言うだけ無駄だって」

「言わないで諦めちゃったの?」

「……小さい頃からその人
をずっと好きだったみたい

高校の時ね、彼は私達より
2歳年上だったんだけど
好きな人と一緒にいたいが為に
わざわざ2年も留年したのよ」

「凄い……」

思わずそう口から出た私を
見て先生は苦笑いをした

「呆れちゃうでしょ?学期末になるとね
テスト全教科白紙で出したりして
頭良いくせに」

「ホント。敵わないわよ
そこまでする程の好きな人がいるんじゃ」

「私達ってことは
……相手、知ってるの?」

返事の代わりに先生は目を瞑った

「彼、嘘つきだから誤魔化すけど
きっとね、自分よりも相手の人の方が
とても大事で、いつも自分の事は
二の次なの

出会った頃は先輩だったのに
いつの間にか同級生

お蔭で長い時間一緒にはいられたけど
……私の為じゃない」

「おーちゃん……」

「だから意地悪で、
『今年からはもう留年
しないんでしょ?』
って言ったら、驚いた顔されちゃったわ
本当、バレバレなのに」

サバサバした言い方の裏に
悲しい声色を覗かせて吐露する本音

それだけ、おーちゃんはその人を
長い間見ていたんだと分かる

それは、なんて……

「辛くないの?」

「無い、と思う?」

質問を質問で返される

それは愚問で、とても無粋なモノだと
返されて気がついた

自分の気持ちに相手が気がついていても
応えられないから知らないフリをしてる
それは果たして優しさというんだろうか?

「ごめん……なさい」

なのに
先生は笑って許してくれた


そして、さっきの今で
言いにくかった事
それも、おーちゃんは言っていいと
促してくれたから


「やっぱり想ってるだけじゃ
伝わらないのかな

おーちゃんの好きな人は
そんなに想って、行動してるのに
相手には分からないなんて」

と聞けた


「まぁ……その相手の場合
ちょっと特殊だから」


と、表情を変えずに言ったのが
印象的だった


おーちゃんの想い人


その相手の人をどんなに思っているのか
話を聞いただけでもよく分かる

きっと好きでたまらなくって
それでも自分を抑えてて……
自分が同じ立場だったとしたら
私に耐えれるだろうか?

伝わらない苦しさに気が狂うんじゃないかとさえ
思うのは私が単に我儘だからだろうか?

そんな考えがいつまでも頭の中で堂々巡り続けるだけで
答えなんて今の私には出そうになかった

先生と私に置き換えた場合も
同じ事ことかもしれない
そう思うと怖かった


だからむしろ
今は未だ答えがでなくていい

今は……まだ……




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