エゴイスト・マージ
もう……私はあの子らと自分を重ねて
見ていたんだと認めるしかなかった





まさか先生を

表面でどんなに笑顔を武装してても
容易には近づけさせない
孤高で怜悧さを持つ人

過去に囚われ無情の中で育った為に
他人に容赦の術を持たないそんな人を


実際何度も

目の前でその非情さを見てきた

よりによって一番好きになっては
いけない人の筈だった

警鐘に気が付かなかったわけじゃない


あの子たちよりは多分その
裏側を知ってるのに

何故こんなにも
惹かれてしまうのだろう
何故他の誰かじゃなく
先生なんだろう

この人はダメだと分かっていた

ちゃんと……分かって……いたのに


そう、一番のバカは私








自覚してしまってから

先生の顔がまるで違って見える

ちょっとした仕草さえ目を奪われ
周りの女の子がカッコイイとか
綺麗だとか騒ぐ意味を
今更のように理解した

先生が別の子と笑って
話してるのを見かけた時
今まで感じたことが無いほどの
嫉妬心が沸いてしまう

私、おかしいの?
凄く自分が醜く思えて仕方が無い

先生と目が合った瞬間
私はその場を逃げ出していた

こんな気持ちになるなんて

あまりに情けなさ過ぎる

どうしたらいいのかわからなくって
不覚にも小さい子供の様に
泣いてしまった

そして


この時
初めて人を好きになったのだと知った

あんなに憧れていた恋というものが
友達の言うように楽しくてワクワクするとか
そういうのは程遠く
苦しいものだとは知らなかった

こんなことなら恋なんてするんじゃなかった



「先生が好き

って、言ったらどうする?」

顔が熱い、声が勝手に震えてしまう

人に自分の心を吐露するというのが
こんなに勇気がいることで
恥かしい行為だとは思わなかった

当然、その相手の顔なんて
見れるハズがない


「嬉しいよ」



その声は想像通り優しかった

……予想以上に

ゆっくり顔を上げると
先生はニッコリ笑っていて

そしてそれは次第に
嗜虐的なモノへと変貌する


「何だ、新しい遊びか?」


先生は訝しげに私をみる

あまりにも思ったとおりの反応だった

実は冗談

そう軽口を叩けない現実が

ちょっと悔しい


だから……

「うん。私と恋愛(ゲーム)しよ?」

そう口にするのが精一杯だった


「…………頭」

「打ってない」


「あ、そう。で、
俺に何かメリットあるのか?」

「無い、かな」

「じゃ、交渉決裂」

「でも、OKじゃないと
先生が困るかも?」

伊達に先生の近くにいた訳じゃない
私だって少しは学習してる

先生への偏差値は       

それなりに上がってる……つもりだ

引いちゃダメだ

ちゃんと真正面を向いて
一歩を踏み出そう

まずは、そこからはじめよう


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