エゴイスト・マージ
「醒~あの本、意味不明!」
入った瞬間に慌てて言葉を止めた
まさか人がいるとは思わなかったから
「こ、こんにちは、蔦さん」
「……よぉ。雨音ちゃん」
ヤバイ
中を確かめもしないで、先生のコト
呼んじゃって、気をつけないと
いくら先生の正体を知ってる幼馴染で
学校関係者じゃないからって
二人の時だけって決められている約束事を
破る訳にはいかない
「勝手に持って行ったのはお前
だからムリだって言ったろ」
先生は別段、気にしていないようで
いつものように冷たい口調で返された
「頑張って読もうとしたのに」
「で、頭が付いていかなかったと」
「ハッキリ言わなくても」
先生の毒舌につい言い返してしまう
「ほな醒ちゃん俺、帰るわ」
蔦さんの声に先生と同時に
振り返る
「ああ」
「蔦さん、もう帰っちゃうんですか?」
もう何度も蔦さんと先生を交えて
話をしたりしていて
今ではすっかり顔馴染みになっていた
「うん。んじゃまたね」
手を軽く振って出て行っていく後姿に
違和感を感じた
アレ?
いつもニコニコ陽気に返してくれる筈の
蔦さんは何時に無く元気なくみえた
どうしたんだろ?
「オイ、昨日の英語のテストお前
最後の問題間違ってたろ」
「!!何で知ってるの??」
訳を聞こうとしたけど、先生の
言葉で飛んでしまった
「あ。アイツ、コレ取りに来たって
言ってたくせに」
先生はそう言って傍に置いてあった
徐に本を持ち上げた
「私、持っていきますよ」
「別にいい。アイツが困るだけだから」
「じゃ尚更じゃないですか」
素直に渡そうとしない先生から
半ば無理やり奪い取り
蔦さんを探しに教室を出る
相変わらず足が速い
辺りにはすでに見当たらなかった
もう校舎を出てしまったのかもしれない
と諦めかけた時
微かに話し声が聞こえた
蔦さん?
”うん。いや、何んも無いよ”
校舎の裏のかなり見つけづらい位置に
その姿を見つけた
蔦さんはケータイで誰かと話してるようで
”違うで”
彼女かな?
どうしよう……
私はこの時、正直迷っていた
プライバシーの侵害だと
頭では分かっていても
どうしても此処を離れ難かった
先生は過去を話してくれたけど
全部じゃない
きっとそれ以上、先生から
聞き出すのは無理だろう
知りたかった
先生に関わることなら何でも
先生と繋がりを持つたった一人
蔦さんしかいない
その存在理由が私の良心を
麻痺させていた
此処にいてもいいのか
このまま会話を聞いていいのか
断言していうけど
他の人なら絶対こんな愚行には
走らない
本を持っている手に力が入る
葛藤の末
一旦引きかけた身を
再びその場へと戻してしまった
入った瞬間に慌てて言葉を止めた
まさか人がいるとは思わなかったから
「こ、こんにちは、蔦さん」
「……よぉ。雨音ちゃん」
ヤバイ
中を確かめもしないで、先生のコト
呼んじゃって、気をつけないと
いくら先生の正体を知ってる幼馴染で
学校関係者じゃないからって
二人の時だけって決められている約束事を
破る訳にはいかない
「勝手に持って行ったのはお前
だからムリだって言ったろ」
先生は別段、気にしていないようで
いつものように冷たい口調で返された
「頑張って読もうとしたのに」
「で、頭が付いていかなかったと」
「ハッキリ言わなくても」
先生の毒舌につい言い返してしまう
「ほな醒ちゃん俺、帰るわ」
蔦さんの声に先生と同時に
振り返る
「ああ」
「蔦さん、もう帰っちゃうんですか?」
もう何度も蔦さんと先生を交えて
話をしたりしていて
今ではすっかり顔馴染みになっていた
「うん。んじゃまたね」
手を軽く振って出て行っていく後姿に
違和感を感じた
アレ?
いつもニコニコ陽気に返してくれる筈の
蔦さんは何時に無く元気なくみえた
どうしたんだろ?
「オイ、昨日の英語のテストお前
最後の問題間違ってたろ」
「!!何で知ってるの??」
訳を聞こうとしたけど、先生の
言葉で飛んでしまった
「あ。アイツ、コレ取りに来たって
言ってたくせに」
先生はそう言って傍に置いてあった
徐に本を持ち上げた
「私、持っていきますよ」
「別にいい。アイツが困るだけだから」
「じゃ尚更じゃないですか」
素直に渡そうとしない先生から
半ば無理やり奪い取り
蔦さんを探しに教室を出る
相変わらず足が速い
辺りにはすでに見当たらなかった
もう校舎を出てしまったのかもしれない
と諦めかけた時
微かに話し声が聞こえた
蔦さん?
”うん。いや、何んも無いよ”
校舎の裏のかなり見つけづらい位置に
その姿を見つけた
蔦さんはケータイで誰かと話してるようで
”違うで”
彼女かな?
どうしよう……
私はこの時、正直迷っていた
プライバシーの侵害だと
頭では分かっていても
どうしても此処を離れ難かった
先生は過去を話してくれたけど
全部じゃない
きっとそれ以上、先生から
聞き出すのは無理だろう
知りたかった
先生に関わることなら何でも
先生と繋がりを持つたった一人
蔦さんしかいない
その存在理由が私の良心を
麻痺させていた
此処にいてもいいのか
このまま会話を聞いていいのか
断言していうけど
他の人なら絶対こんな愚行には
走らない
本を持っている手に力が入る
葛藤の末
一旦引きかけた身を
再びその場へと戻してしまった