クズレタ果実【完】
それはもちろん、作り笑い。

私を心配し、優しくしてくれるのは倫子だけ。

親の役目を果たさなかったあの人たちとは、もう無関係。

鞄を持ち、肩に掛けて立ち上がり、冴嶌を見下ろす。



「私は捨てられたの。…そんな話をするなら、帰るから」



「――北川!」



「過去は捨てた。未来もいらない。世の中、お金だけあれば十分」



振り返る事なく、教室を出た。
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