世界が逆転した日
「あのさ、1人で大丈夫?」


店から出ようとしていたら、俺を追ってきた亮ちゃん。


「大丈夫だよ?タクシーで帰るから。」


子どもじゃないんだし、俺は男だから平気なのに。
亮ちゃんが何を言いたいのか、よく分からない。


「そうじゃなくて...。いや、やっぱり俺の勘違いだと思うからやめとく。」


何か言いかけてやめた亮ちゃんの態度が気になったけど、深く聞いている余裕もなかったので、楽しんできてと告げて店を出た。

少し頭を冷やしたいから歩いて帰ろうかな。
家まで歩いても、たぶん30分くらいで着くはずだ。

もうすぐ終電もなくなる時間で通行人もあまりいない。
こんな暗闇の中で俺に気づく人は誰もいないと思うけど、念のために帽子を深くかぶり直す。
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