世界が逆転した日
「ちょっと待って!あっちゃんでしょ?
なんで逃げるの!?」


「違います!そのあっちゃんって人に似てるってよく言われますけど、他人の空似です。
私は女です!」


俺の腕を掴んで引き止める男の手から必死で逃れようとする。

まずい。
なんだか、他のお客さんにもジロジロ見られてる気がする。

明宏、早く戻ってきて...。



「外見は少し...違って見えるけど。その声、あっちゃんでしょ?
俺があっちゃんの声聞き間違えるわけないよ。」


そうなんだ。
彼とは8年間同じバンドのメンバーとしてやってきた。

他の誰がごまかせたってメンバーをごまかすのは難しいんだ。

どうしよう...。
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