年上の花嫁。年下の花婿。
榊邸は豪邸と呼ぶに相応しい邸宅で、こんなに大きなリフォームを内装まで1人で手掛けるのは、初めてのことだった。
精一杯努めたリフォームは順調に進み、去年の暮れに完了した。
榊(さかき)ご夫妻にも、満足して頂けたようで、私はとても達成感を感じていた。
年が明けて2月、久しぶりに榊様の奥様が事務所に来られた。
榊様の奥様は、今年還暦を迎えるとは思えないほど、若々しく上品な方で、何故か私を気に入って下さったらしい。
「相沢さん、今回のリフォームはあなたが担当してくれて、本当に良かったわ。大満足よ。」
「有難うございます、奥様。」
「それでね。お正月にリフォームのお披露目も兼ねてパーティーを開いたの。そこで――」
奥様のお話によると、そのパーティーに招かれていた男性が榊邸のリフォームを気に入って、自分も是非私に依頼したいとおっしゃったそうだ。
「ふふふ。これその人の連絡先なの。武藤さんとおっしゃるのだけれど、お話だけでも聞いてくれないかしら?」
「もちろんです。すぐにご連絡させて頂きます。」
こんな風に過去のクライアントからの紹介は、うちのような小さな事務所にとって、とてもありがたいことだ。
それに、自分の仕事が認められたということでもあり、私はとても嬉しかった。