年上の花嫁。年下の花婿。
すぐに私は武藤様に連絡し、後日直接会ってお話を伺うことになった。
「相沢夏樹さんですね。」
先方に指定された喫茶店に入ると、手前の座席から声が掛かった。
「はい。武藤様、この度は榊様よりご紹介にあずかり、光栄です。」
席につきながら、挨拶を返す。
武藤様は優しげな目元が印象的な、ダンディなおじ様というのがぴったりな方だった。
飲み物を頼むと、早速という感じで武藤様が、話し始めた。
「去年の榊邸のリフォームは、あなたが担当されたとか。」
「はい。榊邸のような大きな内装を手掛けるのは、初めてでしたが、ご満足頂けたようで嬉しいです。」
「なるほど…私もこの前のパーティーで拝見させてもらったが、和の落ち着く空間と実生活における気配りが違和感なく共に在った。」
第三者である武藤様の賛辞はとても嬉しかった。
「有難うございます。」
「あの空間を見て私は決めました。是非、この仕事をあなたにお願いしたい。」
背筋が伸びる。
それは、小さな震えの前触れ。
「是非とも、相沢さんには我が"KATAGIRI"に来て、新プロジェクトに加わって頂きたい。」