年上の花嫁。年下の花婿。
「相沢さん。建築家、桜井都(さくらいみやこ)の手掛ける新プロジェクトに加わって頂けませんか?」
「サクライミヤコ………って、アノ桜井都なんですかっ!?幻の天才女性建築家のっ!?」
武藤様のおっしゃった名前に、私は頭を殴られた気がした。
"建築家:桜井都"
この業界に身を置いて、彼女の名前を知らない人はいないだろう。
今から35年前、それまで圧倒的に女性の進出が少なかったこの業界へ、突如、彗星のごとく現れた彼女は、その年の賞という賞を全てかっさらい、周囲の注目を一身に集めた。
"天才女性建築家現る"と、メディアにまで騒がれた彼女はその姿を一切公の場に現さず、20代の女性ということしか明かさなかった。
しかも彼女はその5年後、突如引退宣言をすると、それ以後、表舞台へ姿を見せることはなかった。