年上の花嫁。年下の花婿。
また、桜井都は私の最も尊敬する建築家でもあり、彼女の創るスタイリッシュで、独創性に溢れる建築物は年月を経ても人々を、私を魅了し続けている。
「彼女が復帰するんですよ。まぁ、復帰と言っても今回のみ、ですが。」
「それは、どういう…?」
「彼女が現役の時にお世話になった方からのご依頼です。」
「そうなんですか…でも、どうして私が?」
これは本気で疑問だった。"KATAGIRI"ほどの企業なら、わざわざ私を引き抜かなくても、経験豊富で優秀な人材がたくさんいるはずだ。
「榊邸ですよ。先ほども言った通り、あの空間を見て決めたんですよ。」
「……………。」
「急な話で驚かれたでしょう。今年の秋からスタートする予定です。まだ、時間はありますからゆっくり考えて下さい。」
武藤様はそう言うと、再び優しげな微笑を残し去っていった。