年上の花嫁。年下の花婿。
その日の夜、馴染みの居酒屋で、昼間のことを考えた。
急な話で戸惑ったのは確かだが、"KATAGIRI"からの引き抜きなんて願ってもない話だ。
しかも、桜井都のプロジェクトに参加出来るのだ。
事務所の社長だって喜んで送り出してくれるだろう。
高卒の私があんな大手に入れるなんて、普通は有り得ない。
迷う要素はない。
明日にでも、社長に話そう。
ふと顔を上げると居酒屋の大将の顔が目の前にあった。
「今日は進まねぇなぁ、ねーちゃん。」
考えている間に、ジョッキはすっかり空になっていたようだ。
「若ぇのにいっつも1人じゃねぇか。オトコいねぇのかい?」
「若い…って、あたしもう三十路ですよ。」
「……オトコいねぇのは否定しねぇんだな。」
「……………。」
「ね、ねーちゃんの好きな芋のいい焼酎があるんだ。それ、出してやるよ。」
大将は慌てて厨房へと去っていった。
別に、オトコがいなくたっていいじゃないか。