年上の花嫁。年下の花婿。
「……何故、私なのでしょうか?」
片桐冬馬の切羽詰まった事情は理解したが。
"KATAGIRI"の三男なんて肩書きなら、結婚相手は選り取り見取りだろう。
ましてや、これだけのイケメンなら肩書きなんて無くとも、女性の方から寄ってくる。
そんな彼が私に結婚を申し込む理由がわからない。
そんな不可解な気持ちは顔に出ているはずだ。
なのに、片桐冬馬は相変わらずの満面の笑みでこう言った。
「一目惚れですよ」
そりゃ、もうにっこりと。ムカツクほどに。
「……真面目に答えて頂けませんか?」
「本心ですよ」
ひくり、と頬が引き吊りそうになるのを仕事で培われたポーカーフェイスでやり過ごす。
「まぁ、でも相沢さんが思っている一目惚れとは少し違いますかね」
そう言いながら、クスクスと笑う笑顔はかなりの糖分率を保持している。
「…………。」
無言で相手を見据えれば、片桐冬馬は笑いを引っ込め真剣な表情で口を開いた。