年上の花嫁。年下の花婿。


既に湯気の立っていない紅茶に手にとって目を落とし、それに写り混む自分にゆっくりと息をつく。

冷めてしまっても上等な味だ。

こんな状況下でなければ、感嘆の声をあげていただろう。


「だから、私に自分と結婚しろとおっしゃるんですか?」


「はい、そうです。悪い話ではないでしょう?」


「確かに、悪い話ではありませんが……」


ふざけるなよ。そんな訳アリな話が良い話な訳がない。


「私には荷が重すぎますわ。年齢的にも。私より若くて、優秀な女性はたくさんいます。そして、貴方と人生を歩みたいという女性はそれ以上に多いと思います。」


愛想笑いで微笑んで、丁重に辞退する。

こんなお坊ちゃんの阿呆な話に付き合う暇はない。


美味しい紅茶(冷めてたけど)をタダで飲めただけマシだと思おう。

私はさっさと退散しようと腰をあげた。


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