年上の花嫁。年下の花婿。
おぼっちゃんに背を向けた途端に顔が不機嫌に歪むのがわかった。
馬鹿馬鹿しい。
一時でもあんなおぼっちゃんに目を奪われた自分を張り倒してやりたくなった。
「櫻井都」
おぼっちゃん、もとい、片桐冬馬がぽつりと溢した言葉に、出口へ向かおうとしていた足が止まる。
「僕が誰の息子で、何処の会社の者か、お忘れになりましたか?」
「っ………」
息を飲んだ音は後ろの彼に聞こえただろうか。
「あなたは仕事のできる女性だ。僕の言葉の意味、わからないはずがありませんね?」
あまりに愉しげな声に、息を飲んだ音を彼がしっかりと聞き取ったことを悟る。