年上の花嫁。年下の花婿。


そこからは、あっという間だった。


淡々と進んでいく結婚に関する諸々。

片桐冬馬が示した条件はただ二つ。

離婚は認めない。

周囲にはおしどり夫婦で通す。


この二つさえ、きちんと守っていれば後はどうでもいいらしい。

むろん、不倫も自由だ。

周囲にバレさえしなければ。





それに対して、私が出した条件は


仕事は辞めない。

子供は産まない。


この二つだった。



片桐冬馬はそれを一も二も無く受け入れた。


子供に関しては、彼自身あまり興味はないようだ。

彼自身が末っ子の三男ということと、既に彼の兄弟のお嫁さんが男の子を産んでいること、兄弟仲にこれといった問題もなく、お嫁さんとお姑さんの仲も良好とくれば、孫を産むプレッシャーなどほとんど無いだろう。

逆に愛し合ってもいない私たちが子供を持つことの方が恐ろしいくらいだ。






大して、心踊るようなことはなかった。

というか、仕事の事務作業並みに淡々と処理した。(弱小建築事務所は一人で大概の業務をこなさなければやっていけない。)

まぁ、愛し合って結婚するわけではないのだから、当たり前と言えば当たり前なのだ。

今後の結婚生活もそれなりに進んでいくだろう。


こうして、彼は親の安心と周りからの要らぬ干渉の排除を。

私は最高の仕事と老後の心配の無い生活を。




私たち二人は自由で安泰な"生涯の伴侶"を手に入れた。

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