愛するということ
オヤジは、小さいけれど不動産会社を経営していた。


経営者といっても、小さな会社だからオヤジがやることはたくさんあって、毎日夜遅くまで働いている記憶しかないんだけど・・・



オヤジが、出先で倒れたって電話がかかってきたとき、小さいながらに不安になったし、瞬が大泣きして、病院へ向かう母さんにしがみついて離れなかった。



オヤジの状況が、どんなに深刻なものかなんて、まだガキだった俺には、分からなかったけど、毎日、病院へ顔を見せに行くことが日課になった。



最初の頃は、学校のことや、友達のこと、時々勉強のことなんかを話して帰ってくる毎日だったけど・・・


そのうち、将来のこととか、「男とは・・・」みたいな、11歳のガキには理解できない話しも多くなった。




・・・今思えば、オヤジが普通に生きていれば、それなりの歳になった俺たちにする話を、できないことが分かっていて

理解できないことは、承知で、俺たちに話していたんだと思う。




俺や、アニキには、母さんや、妹たちを悲しませることだけはするなとか・・・

< 13 / 217 >

この作品をシェア

pagetop