愛するということ
今日一日、主の不在だった部屋は、淀んだ空気が部屋いっぱいに充満していて、暗い気持ちを倍増させる。



カラカラカラと正面の窓を開けると、湿ってはいるが、生ぬるい風邪空気が一気に部屋に入ってくる。




『瞬ちゃんの婚約者・・・』




友里の放った言葉が再び耳に蘇る。



それまで、友里から聞く瞬の話には、付き合っている男がいるなんて、一度も出てこなかった。


瞬・・・


最期に瞬を見かけたのはいつだろう。





高校の卒業式に在校生代表で出席していた瞬だったかな。
花道を退場する時、一瞬だけ目が合って、「おめでとう」って声には出さずに言ってくれたっけ。
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