愛するということ
「・・・あっ。瞬(しゅん)ちゃん・・・」

私の顔を見て、安心したのか、彼女の顔は一気に血の気を戻していく。



「あのさ、肩の手、はなしてくれない?」


私は、友里の肩をいまだに掴んだまま、こっちを向いている彼に向って、抑揚のない、低めの声でできるだけ低い声で静かに話しかける。



こういう時、できるだけ事務的に進めていく方が、いいことは、この数年で私が学んだことだ。



「・・・あっ!すみません・・・あの、でも・・・」


やっと自分が友里の肩を掴んでいたことに気付いたらしい彼は、あわてて友里から一歩後退した。




「友里、彼とは話は終わったの?一緒に帰ろう」


彼から友里を隠すように肩を抱き、背をむける。

現状がわからずボーッと立ち尽くす彼をおいて歩き出した時、



「あのっ!友里ちゃん。俺・・・」



歩き出そうとした友里の腕を掴み、まだ話を続けようとする彼に、内心舌打ちをしながら、


「あのね、友里、喘息もってるの。極度のストレスが発作の原因になったりするんだよね。

発作になったら、呼吸困難になって、最悪、死んじゃうかもしれないんだよ。責任もてるの?足立隆平君」
< 5 / 217 >

この作品をシェア

pagetop