君と見上げた空【完】
ガチャッ

「ただいまー蝶ッ」


お母さんが帰ってきた。

今日あったことを何も知らない
お母さんが……


「蝶、今日の夕食はねー出前に…」

「お母さん」

お母さんが喋っている途中で口を
挟んだ。


「なに、蝶??」


私は息を一つ吐いてしゃべりだした。


「お母さん、男の人に貢がせてたの??」


「……え?…」


私の口から出た予想外の言葉に
お母さんは驚きを隠せない様子でいた。


「え?ちょ…蝶、なに言ってるの?
 私はそんなことしてないわよ…?」


「今日荒川さんと由希ちゃんが言ってた。
 …ねぇお母さん、どうしてこんなことを…」


「…もしかして、蝶と同じ歳の子供がいるって
 言っていたあの人のこと…?」


多分そうだろうと思い、私は頷いた。


「……ごめん蝶……言い訳になるかも
 知れないけど、私知らなかったの」


「え?…」


「最初は気づかなかった。私の通帳の
 お金が増えていることを。それで、月日
 が経つにつれおかしいって思い始めた。
 だけど私は気づかぬふりをした。
 このお金のおかげで生計を立てれたから」

お母さんはそう言って泣き出した。

「本当にごめんなさい!…私ホント最低…!」

「お母さん……」

「だけど、私……」

お母さんは強い瞳で私を見て…言った。

「もうこんなこと絶対にしないから!
 蝶に悲しい思いはさせないし、他の人も!」

はっきりとした口調で話すお母さんは
本当に前と変わった。だから私は、

「うん、うん、分かった…」

そう頷いた。





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