12年目の恋物語
だって、考えてみても、おかしいもの。
12年間、ずっと同じクラスなんて、おかしいもの。
偶然なんて、確率的におかしいもの。
カナとわたし……そして、田尻さんが通うのは、私立杜蔵(もりくら)学園。
幼稚部から大学まである、けっこう有名な名門私立学校。
カナのお家はお金持ちで、学園への寄付金もすごいのだと思う。
だから、例えば、わたしと同じクラスにしてくれって、それくらいの願いなら、簡単に叶ってしまうと思う。
わたしの世話がしたいから、同じクラスにしてくれ、なんて。
だって、ただでさえ手のかかるわたしみたいな生徒を、自分から世話したいって言ってくれるんだよ?
そんな先生にとっても都合のいい願い、叶えない理由が見つからない。
「だからね!!」
ようやく、わたしが動揺したのを見て、田尻さんが勝ち誇ったように言った。
「叶太くん、離してあげて」
「……カナ」
だから、帰宅部だったんだ。
中1で、バスケ辞めた後も、ずっと。
「もう、自由にしてあげても、いいでしょう!? 11年間、束縛してきたんだから、もういいでしょう?」
4月に高等部に入学して、もうすぐ一ヶ月。
そろそろ、部活を決める時期。
だけど、カナは笑って、「帰宅部だよ」って言っていた。
でも、カナの部屋にNBAのDVDや、バスケ雑誌が幾つもあるの、わたし、知ってる。
カナが、体育のバスケの時間、どんなにキラキラ輝いてたか、知ってる。
楽しそうにプレイしていたの、知ってる。
……なんで、気がつかなかったんだろう。
なんで、今まで、気がつかなかったんだろう。