12年目の恋物語
そんなもんか?
と思っていると、寺本はパンッと手を叩いて、にっこり笑った。
「ま、そんなん、どうでもいいじゃん?
親は親。別に、わたしが働いてもらったお金じゃないし。ねえ?」
その言葉に、広瀬も頷く。
「小遣い、山ほどもらってる訳でもないし、家がちょっとでかいくらいで、おまえもオレも、何も変わらないって」
そうかぁ?
だって、この前、オレ、夕飯をおごってもらったばっかだぞ?
と思っていると、広瀬は、素早くオレの心を読んで、言い訳した。
「だから、あれは、家に遊びに来た友だちにご馳走するのと同じなんだって。……だいたい、オレ、小遣い5千円だぞ」
「……あ、オレも」
「な? 同じだろ? スマホ代とかは別で払ってくれてるけど」
「あ、それも同じ」
「な?」
と、本題にはなかなか入れないでだべっていると、ドアがノックされ、広瀬のお母さんとお手伝いさん(!)がお茶を持って入ってきた。
……いや、やっぱ、違うだろ?
出された高級感漂うケーキと、いかにも高そうなティーカップ。
だけど、引き気味なオレを見る広瀬の顔が、なんとなく寂しそうに見えたから。
オレは、こだわるのは止めることにした。