12年目の恋物語
……あれ?
「なあ」
思わず、広瀬の醸し出す青い炎のようなオーラのことを忘れて、広瀬の肩を叩いていた。
「牧村の家って、あれじゃないの?」
と、オレは、純和風の屋敷を指さした。
「ん?」
広瀬は、オレの指先の屋敷を見ると、「ああ」と何気なく言った。
「あっちは、ハルのじいちゃんち。ハルの家は、こっちだよ」
広瀬が指さしたのは、白い洋館。
よくよく見たら、まるで趣の違う2軒の家の間には、塀らしき物は見当たらなかった。
木やら何やらで、さりげなく区切ってある。
……ここの敷地だけで、分譲住宅10軒や20軒はいけるな。
…………まあ、さ。
別に、いいけど、さ。
ここまで違うと、逆の意味で吹っ切れる。
そうして、オレは、どうでもいいようなことを考えた。
確かに、牧村のイメージなら、白い洋館だよな。
自分が、この場にそぐわない、どうでもいいことを考えているって分かっていて、思わず笑った。
それから、また、少し冷静になった。
……てか、もしかして、
エスカレーターで上がってきてるヤツら、みんな、こんな家に住んでんの!?
さすがに、そんな訳、ないだろ?
そう思いながら、オレは、クラスメイトたちの顔を思い浮かべた。