12年目の恋物語
ぽろぽろと涙があふれ出した。
「ま、牧村さん!?」
田尻さんが、突然、あふれ出した涙に驚いた顔をする。
「ご、……ごめんね」
何に謝っているんだろう?
カナに?
それとも、田尻さんに?
突然、泣き出したことに?
そんなの、決まってる。
カナに、に、決まってる。
「分かってくれたのね!?」
「……う…ん」
田尻さんは、急に笑顔になって、わたしの手を両手で握りしめた。
「じゃあ、叶太くんを解放してくれるのね!?」
わたしはコクリと頷いた。
そのまま、顔を上げられなかった。
涙が、ポツリポツリと革靴をぬらした。
地面も、靴も、自分の足も……、すべてが涙でゆがんで見えた。
あんまり当たり前に側にいすぎて、気がつきもしなかった。
あまりに、側にいすぎて。
ただの幼なじみだと思ってた。
世話焼きで優しい、ただの幼なじみだと思ってた。
……わたし、カナが好きだ。
離れなきゃいけないって、そう考えただけで、こんなに胸が苦しい。
涙が止まらない。
でも、
ごめんね、カナ。今まで、ありがとう。
大好きだからこそ、
カナを解放してあげる。