12年目の恋物語
陽菜は、別に誰かに逆らったわけでも、わたしを助けてあげようとか、そんな気負いがあったわけではないと思う。
陽菜は穏やかで優しい。
でも、実は淡々としていて、正義感を振りかざすようなタイプでは、決してない。
陽菜は、どのグループにも入っていなかった。
いつも、叶太くんと一緒にいて、
女の子といることは、ほとんどなかった。
それは、小学生の頃からで、
どんなにからかわれても、叶太くんは、陽菜から離れなかったし、
陽菜は、いつも叶太くんの隣で楽しそうに笑っていた。
どのグループにも入っていなかったけど、陽菜は、いつも誰とでも、ちゃんと仲良く付き合っていた。
わたしがクラスの女子、誰とも話さなくなった頃、陽菜は体調を崩して、学校を休んでいた。
過去、友だちだった子たちが、わたしと口をきかなくなって一週間と少したった頃、
ようやく陽菜は登校してきた。
そして、その翌日、教室移動のタイミングで、
「しーちゃん、一緒に行こう」
と声をかけてきた。
とても懐かしい愛称で。
初等部の1、2年、陽菜と同じクラスだった。
低学年の頃は、みんなから、そう呼ばれていた。