12年目の恋物語
わたしが、教室で誰とも話せなかったのは、結果的には、たった一週間と数日だったかも知れない。
だけど、それは、いつ果てるとも知れない拷問のような時間で、
終わってみれば、一週間と少しでも、
あの時のわたしには、永遠にも思えた。
何より、陽菜がいなければ、わたしの苦しみは、
きっと一週間では終わらなかった。
陽菜はごく自然に「しーちゃん」と、
バスケ部でずっと一緒だった叶太くんは、「志穂」って呼んでくれて、
わたしは、教室の中に居場所ができた。
学校に行きたくないという、胃のきしむような重い気持ちから救われた。
あの、自分の居場所がどこにもないという、
やるせない、苦しくてたまらない気持ちから、解放された。
その頃、陽菜の隣には、いつも叶太くんがいて、
だけど、わたしも自然と一緒にいられる、穏やかな空気が流れていて、
叶太くんも、わたしがいるのが当然のように接してくれて……。
陽菜が休みの日は、叶太くんが、まるで、陽菜の代わりのように、わたしと一緒にいてくれた。
話すのはバスケのことか、陽菜の話ばかりだったけど。