12年目の恋物語
3人での毎日は、1ヶ月くらい続いた。
1ヶ月経ったら、今度は、別の子がターゲットにされて、グループから追い出されてきた。
陽菜は、ごくごく普通に、何の気負いもなく、その子にも声をかけた。
更に、3人目の生け贄も追い出されて、わたしたちは5人になった。
女子4人と叶太くん。
だけど、不思議と、とても居心地が良かった。
クラスのボスは、結局、追い出したわたしたちが、何もこたえていないことに気づいて、
男子たちが、自分のことを「ボス猿」と呼んでいるのに気づいて、
手のひらを返したように、甘い声で、わたしたちに声をかけてきた。
後から追い出された2人は、早々に元のグループに戻り、
わたしにも声をかけてきた。
もう大丈夫だよ、と。
あんなに嫌な目に遭わされたというのに、
わたしには、元の場所に戻りたいという気持ちがあって……。
ドラマの話して、オシャレの話して、彼氏欲しいねなんて話して、
バカみたいに騒いだり、休みには一緒にショッピング行ったり、
学校帰りに、コッソリ寄り道したりして……
そんな時間が、ガヤガヤしたにぎやかさが、懐かしくて。
だけど、陽菜たちと過ごす、穏やかにゆったりと流れる時間も名残惜しくて。
何より、助けてもらったのに、陽菜を置き去りにするような気持ちがして……。
悩んでいたら、陽菜が、背中を押してくれた。
「ほら、呼んでるよ、しーちゃん。行っておいでよ」
最初の日に、声をかけてくれたのと同じ、優しい笑顔で、
陽菜は、わたしの背中を、ポンと押してくれた。
わたしは、元のグループに戻った。