12年目の恋物語

3人での毎日は、1ヶ月くらい続いた。



1ヶ月経ったら、今度は、別の子がターゲットにされて、グループから追い出されてきた。

陽菜は、ごくごく普通に、何の気負いもなく、その子にも声をかけた。

更に、3人目の生け贄も追い出されて、わたしたちは5人になった。



女子4人と叶太くん。

だけど、不思議と、とても居心地が良かった。



クラスのボスは、結局、追い出したわたしたちが、何もこたえていないことに気づいて、

男子たちが、自分のことを「ボス猿」と呼んでいるのに気づいて、

手のひらを返したように、甘い声で、わたしたちに声をかけてきた。



後から追い出された2人は、早々に元のグループに戻り、

わたしにも声をかけてきた。

もう大丈夫だよ、と。



あんなに嫌な目に遭わされたというのに、

わたしには、元の場所に戻りたいという気持ちがあって……。



ドラマの話して、オシャレの話して、彼氏欲しいねなんて話して、

バカみたいに騒いだり、休みには一緒にショッピング行ったり、

学校帰りに、コッソリ寄り道したりして……



そんな時間が、ガヤガヤしたにぎやかさが、懐かしくて。



だけど、陽菜たちと過ごす、穏やかにゆったりと流れる時間も名残惜しくて。

何より、助けてもらったのに、陽菜を置き去りにするような気持ちがして……。



悩んでいたら、陽菜が、背中を押してくれた。



「ほら、呼んでるよ、しーちゃん。行っておいでよ」



最初の日に、声をかけてくれたのと同じ、優しい笑顔で、

陽菜は、わたしの背中を、ポンと押してくれた。



わたしは、元のグループに戻った。

< 115 / 203 >

この作品をシェア

pagetop