12年目の恋物語

「ハルの身体、たぶん、おまえらが思ってるより、ずっと悪いんだ」



「ハル、な。生まれたとき、1年、生きられないって言われたんだって」



「1歳になったとき、よく頑張ったけど、3年はムリだって言われて」



「10歳のとき、もう大丈夫かも知れないって言われて、

だけど、中1の冬、12歳のとき、また倒れて……」



「おまえ、知らないだろ? あのときだって、ホント、心臓、何回も止まって、」



やめてよ!!



縁起でもない話、やめてよ!!



わたしは奥歯を噛みしめた。






叶太くんは、陽菜に心労をかけたくないって、陽菜を諦めようとしている。



だけど、やっぱり、わたしには信じられなかった。



陽菜が、他の人を好きだなんて、あり得ない。



ぜったいに、あり得ない。





「陽菜、……どうして欲しい?」



空を見上げて、つぶやいてみた。



「なんで、こんなことに、なっちゃったんだろうね?」



天使でなんて、なくていい。



いつも笑ってなくて、いい。



泣いたっていい。



怒ったって、愚痴言ったって、誰かを悪く言ったっていい。



ねえ、陽菜。

どうして欲しいか、教えてよ。

わたし、陽菜のためなら、なんでも、やってあげられるよ?



それが、もし、

本当に、もし、だけど、

もし、叶太くんじゃない、別の人を好きになったんだったとしても、

わたし、ちゃんと、応援できるよ。



そんなことはないって、心の底から、信じているけど……。
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