12年目の恋物語
「ねえ、牧村さん」
校舎裏。
昼の日差しに、木々が深い影をつくる。
梅雨時なのに、今日も晴れていた。
あのときと、寸分違わず、同じ場所。
あの日は、けっこう歩いて、ここまで来た。
この雑木林の向こうの中等部に、先月まで通ってたんだ……なんて、のんきに歩いてた。
わたしが校舎の壁を背に、田尻さんが中等部に続く雑木林を背に立つ。
新緑が、とても綺麗なのに、
まるで、わたしは、閻魔様の判定を待つ罪人のような気持ちだった。
わたしが何も言えずにいると、田尻さんがため息を一つ吐いてから、話し出した。
「あのさ、こんなこと言いたくないけど、」
田尻さんは、わたしをじっと見つめた。
「叶太くんのこと、どうなってんの?」