12年目の恋物語

田尻さんは、わたしから視線を外さず、わたしの答えを待っていた。



でも、何も言えなかった。



何も答えられなかった。



だって、わたし、何もできていない。



あれから、変わったのは、

ただ、わたしとカナの間に、

会話や笑顔がなくなったことだけで……。



「叶太くんに、いつまで荷物持ちさせるの?」



田尻さんの言葉が胸に突き刺さる。



「いったい、いつまで、叶太くんを縛り付けるつもり?」



田尻さんは静かに、だけど厳しい声で言いつのる。



「もう1ヶ月経ったけど、なにも変わってないじゃない」



そんなこと、

わたしが一番、よく分かってる。



カナは相変わらず、わたしを送り迎えしてくれて、わたしをいつも気にしていて……。



「なにか言いなさいよ!」



でも、わたしだって、もういいんだって、カナに、何回も、何回も……。



カナは悲しそうな顔をしていたのに、

カナがなんでって言っていたのに、



それでも、もういいって、カナに言ったのに……



ねえ、

これ以上、どうすればいいの?



「牧村さん!」



目頭が熱くなる。

鼻の頭がツンとして……。



ダメ。



泣いちゃ、ダメ。



「牧村さん! 聞いてるの!?」
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