12年目の恋物語

聞いてる。



ちゃんと、聞いてるよ。



でも、わたしの返事は、声にならなかった。



カナを自由にしてあげたかった。

そうしようと、がんばった。



……でも、カナは、優しいから、

どう言っても、わたしから離れようとしない。



もう、どうすればいいのか、わたしには……。



ダメだと思うのに、

泣いちゃいけないと思うのに、

こらえきれず、涙がこぼれ落ちた。



どうして、わたしは、こんな風なのだろう……。



田尻さんの顔を見られず、うつむいた。



「また泣く! 泣けばすむと思ってるの!?」



思ってない!

そんなこと、思ってない!



だけど、もう、どうしていいか、分からなくて。

答えを知っているなら、教えて欲しい。



「ど、どう……したら…いい? わた…し」



でも、わたしが声を絞り出すようにして聞くと、

田尻さんは、吐き捨てるように言った。



「そんなこと、自分で考えてよ!!」



それから、

全身から怒りを漂わせて、わたしを睨みつけると、



「叶太くん、かわいそう!」



強い口調で、そう言って、わたしを残して、走り去った。
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