12年目の恋物語
あまりの痛みと苦しさに、無意識に身体が丸くなる。
心臓をわしづかみにして、雑巾のように、絞られているような、そんな痛み。
歯を食いしばって、痛みに耐える。
薬。
効くか分からないけど、不整脈を抑える薬が……。
だけど、ポケットに手が入らない。
震えて、手が、うまく動かなかった。
スカートの上を、上滑りして……。
苦しくて、意識が飛びそうになる。
心臓の痛みの波に合わせて、ひどいめまいと吐き気に襲われた。
「ぐ、……う、ゲェ」
我慢できず、戻した。
ああ。
もしかして……
命の期限が来たのかも知れない。
いつか来ると覚悟していた、命の期限が、今……
カナ。
ごめんね。
たくさんたくさん、優しくしてもらったのに、
最近、ひどい顔ばかり見せてたね。
カナ、ごめんね。
ありがとうも言えず、ごめんね。
こんなに早くお別れのときが来るのなら、
もっと、カナの笑顔が見たかった。
声が聞きたかった。
カナ。
わたしは、短縮ダイヤルの1番を押した。
カナ。
……最期に一目、会いたかったな。