12年目の恋物語
保健室のドアをノックして、
「こんにちは~」
と中に入ると、先生が「あら」と声を上げた。
「牧村さん……よね?」
「はい」
まだ入学して数ヶ月なのに、先生がそう言うくらい、オレはしょっちゅうハルを連れて、ここに来ていた。
ハルを送ってきて、様子を見に来て、迎えに来て。
そのハルを探して、保健室を見回すが、姿が見えない。
「……あれ? ハルは?」
ベッドのカーテンはすべて開いていて、誰も寝ていない。
「少し前に、女の子が来て、一緒に帰ったわよ」
「……女の子?」
「体操服着てたけど」
「うちのクラスかな? 4時間目、体育だったから」
「ごめんね。見かけない顔だったから、名前までは……」
志穂は教室にいた。
いつもハルと一緒に弁当を食べてる女子2人も、志穂と一緒だった。
後、誰がいる?
ハルを送り迎えするのがオレの仕事だと知らないヤツは、クラスにはいないはずだ。
わざわざ、ハルを迎えに来る女の子?
「先生、それ、どんな子だったか分かる?」
先生は、にっこり笑って教えてくれた。
「背は、ちょっと高め、ショートヘア。
運動部じゃないかな、引き締まったいい身体してたわよ」
ショートヘアの女子。
身長は165センチくらい?
運動部。
「先生、そいつ、日焼けしてた?」
「特別、日焼けしてるってことは、なかったわよ」
うちのクラスの女子じゃない。
……たぶん。
「ありがとう!」
何となく、本当に何となくだけど、嫌な予感がして、
オレは、教室に駆け戻った。