12年目の恋物語

教室に戻ると、一番に、志穂の姿を探した。



……いない。



志穂がいつも弁当を食べてる女子2人はいるけど、そこにハルの姿はなかった。



「なあ、ハル、来なかった?」

「ううん。保健室じゃないの?」

「いや、帰ったって言われて……」

「ここには、来てないよ」

「ありがと!」



そう言って、オレは斎藤の元に向かった。

オレがいないからか、バスケ部の男子と、弁当食べながらしゃべっているところだった。



「斎藤! ハル、戻って来た!?」



息を切らせてオレが言うと、斎藤は、首を振った。



「いや、来てないんじゃないか? ……保健室じゃなかったのか?」



斎藤は答えながら、教室を見回した。



「いなかった」

「いない?」

「なんか、運動部系の女子と一緒に帰ったって……」

「へえ。……誰?」

「分からない」



ハルが友だちと話してるんなら、別にいい。

ただ、あんなに調子が悪そうなハルが、教室にも戻らず、寄り道しているのが気になった。

それに、保健の先生が言っていた容姿の女子。

ハルが仲良くしてる子に、そんな子、いたか?



「斎藤、悪い、付き合って」

「ん?」

「……なんか、嫌な予感がして」



そう、あくまで予感。

ただ、オレは、この第六感のようなものを大事にしていて。

こういう感覚は、割と当たっていて……。



「おう。行くか」



斎藤は、弁当のふたを閉じると、スッと立ち上がり、オレの肩に手をかけた。
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