12年目の恋物語
半ばムリヤリ、救急車にはオレが同乗した。
生徒が同乗って、普通はさせないんだろうけど、
行き先は、ハルの家の病院だったし、
オレはハルの幼なじみで、
ハルのことを一番よく分かるのは、オレで、
それは、先生もよく知っていたから、許してくれた。
先生は、救急車の後をついて、車で病院に来ると言っていた。
救急隊員が大声で呼んでも、救急車の中でも、意識は戻らなくて……。
酸素濃度は低くて、
酸素マスクを付けられて、
さりげなく取り出されたAEDが、
ハルの容態の重さを物語っていて……。
「陽菜!」
病院に着くと、ハルの母さんと、じいちゃんが待っていた。
救急隊員からの引継ぎ。
ハルは心電図やら点滴やら酸素マスクやら、いろいろ付けられて、オレは一通りの話を聞かれた後、外に出された。
保健の先生がもう来ていて、オレは、見かけた処置の様子を伝えた。
「大変だったわね」
先生がいたわるように言ってくれた。
だけど……
「大変なのは、ハルだから」
「……そうね」
オレには、何もできない。
こんなとき、オレには、なんの力もない。
無力な自分がイヤになる。
なんで、防げなかったんだろう?
どうして、こんなことになってしまったんだろう?
入学した時には、ハルは今より、ずっと元気だった。
楽しそうで、仲の良い志穂と同じクラスになれたと喜んでいた。
毎日、ニコニコ笑っていたのに……。