12年目の恋物語
16.羽鳥の気持ち
放課後になって、息を切らしてやって来た寺本志穂は、泣きそうな顔で言った。
「先輩。……間に合わなかった」
「なにが?」
と聞くと、ギュッと拳を握りしめて、ボクの目をしっかり見て、言った。
「陽菜、倒れて……救急車で運ばれた」
「え!? いつ!?」
「お昼休み」
寺本さんは、涙を堪えるように、奥歯を噛みしめた。
「場所、変えようか」
放課後、速効で来るように言い、それを忠実に守った寺本さんが走ってきただけあり、教室には、まだ、かなりの人数が残っている。
こんなところで、女の子を泣かせたとなると、大騒ぎだ。
「また、非常口ですか?」
「そうだな。取りあえず、そうしようか」
早く詳細も聞きたい。
人のいない場所を探しているより、すぐそこの非常口の方が確実だ。
万が一、誰かがいたら、そのまま非常階段を降りて、外に出ればいい。
さすがに、そこまで行けば、人気もないに違いない。