12年目の恋物語
ボクが怪訝そうな顔をしていると、寺本さんは続けた。
「なんか、すごく具合が悪そうだった……って言うか、」
寺本さんが、顔をゆがめた。
「意識、なかったって」
ボクも息をのむ。
思っていたより、事態は悪い方に転がっていた。
「叶太くんは、たぶん、もっといろいろ分かっているだろうけど、斎藤くんじゃ、それ以上、分からないって」
……ハルちゃん。
「あの、叶太くんが、陽菜のおじいさんに電話してて、その内容が、意識はない、呼吸はかなり苦しそう、でも、心臓は動いてる……だったって」
心臓は動いてる、
そう言わなくてはならないほどの状態。
ハルちゃんのおじいさん。
牧村総合病院の院長か。
最高の医療は保証されているけど……。
寺本さんの顔を見ると、やはり、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
だけど、泣かない。
この子は強い。
「叶太くんは、すごく落ち着いてて、救急車に一緒に乗って行っちゃったって……」
ああ、だから、情報源が斎藤。
「何していいか分からなかったけど、とにかく先輩には報告しなきゃと思って」
「ありがとう」