12年目の恋物語
どうやら、ボクには、手足として使える部下ができたらしい。
さて、どう使うかと考えていると、突っ込みが入った。
「先輩、当たり前ですが、」
「なに?」
「陽菜のためにすることだけですよ」
ビシッと人差し指を立てて、ボクに釘を刺す寺本さん。
さっきまで泣きそうな顔をしていたのに、もう元気に前を向いている。
「ははは。ちゃっかりしてるなぁ」
「……ちゃっかり?」
「ボクをただで使おうなんて」
寺本さんは、不思議そうに首を傾げた。
「え? 使われるのは、わたしでしょう?」
ボクは階段の手すりにもたれて、笑いながら言った。
「キミが言ってるのは、自分は頭を使わずに、ボクに状況を把握させて、最適な施策を考えさせて、道を示せってことだよ」
寺本さんが押し黙るのを見て、どう出てくるかと思ったら、
「……あの、しさくって、どういう意味ですか? 試しに作る……の試作じゃないですよね?」
と真顔で聞いて来るものだから、ボクはまた爆笑する羽目になった。
ハルちゃん、キミの友だちは面白いな。