12年目の恋物語
17.叶太の奮闘
病院に運ばれたハルは、当然だけど、そのまま入院となった。
オレは、ハルの側にいたかったけど、入院先がICUだったので、付き添うこともできなかった。
ただ、ハルのじいちゃんが、特別にと、家族でもないのにコッソリと中に入れてくれたので、ほんの5分ほどだけど、ハルに会うことができた。
たくさんの点滴に心電図、呼吸器……医療機器に囲まれて、ハルは昏々と眠り続ける。
意識はまだ、戻らない。
ハルの冷たい手を握る。
ピクリとも動かない。
「ハル」
耳元で、そっと呼びかけてみる。
「ハル、起きろよ」
それから、ハルの髪をそっとなでた。
ハルの頬には、まるで血の気が感じられない。
手はこんなに冷たい。
なのに、ハルの髪はいつもと同じに柔らかくて、ふわふわだった。
両手で、ハルの手を包み込み、はあっと息をかけて暖める。
ハルが凍えてる気がして。
「叶太くん」
呼ばれて振り返ると、白衣を着たハルの母さんがいた。
「出ようか?」
「……もう少し」
もう出るようにって言われると思ったのに、ダメ元でそう言うと、おばさんは、
「じゃあ、少しだけ、ここで話そうか」
と言って、薄く笑った。
「ねえ、叶太くん、陽菜はいったい何に悩んでいたの?」
おばさんが言った。
オレの方が聞きたいよ。
そう思ったけど、そうは言えない。
「……すみません。オレにも分からなくて」