12年目の恋物語

「ハルに会えない……」



ハルが入院して一週間。

一般病棟に移った日に、オレのせいでハルの容態がおかしくなった。

そんなことが二日続いて、

オレは、お見舞いに行っても、病室に入れてもらえなくなった。



オレが行くと、ハルがパニックを起こす。

泣いて、オレから逃げようと暴れて、興奮して、呼吸困難を起こして……。



「なんでだよ」



オレのぼやきを聞いた志穂が、親切にも教えてくれる。



「陽菜、大分、良くなってきたよ」



それは、オレの台詞だろう?



そう言いたい。

だけど、言えない。



なんでおまえなんだよ、と言えない。

ハルが志穂に会えて喜んでるなら、オレはそれを喜ばなきゃいけない。



……とは思えども、理性と感情は別モンだ。



「ずりーよ、志穂」



オレは机に突っ伏して、ため息を吐いた。



「なんで、おまえは会ってもらえるんだよ」



じとーっとオレが志穂を見上げると、志穂は気の毒そうに言った。



「……会ってもらえないの、叶太くんだけじゃない?」



「ひでー。おまえ、ホント、情け容赦ないな……」



八つ当たりだ。

そう分かっていても、ため息まじりに愚痴らずにはいられなかった。



「そんな可哀想な叶太くんに、羽鳥先輩から伝言あるんだけど」
< 157 / 203 >

この作品をシェア

pagetop