12年目の恋物語
「ハルに会えない……」
ハルが入院して一週間。
一般病棟に移った日に、オレのせいでハルの容態がおかしくなった。
そんなことが二日続いて、
オレは、お見舞いに行っても、病室に入れてもらえなくなった。
オレが行くと、ハルがパニックを起こす。
泣いて、オレから逃げようと暴れて、興奮して、呼吸困難を起こして……。
「なんでだよ」
オレのぼやきを聞いた志穂が、親切にも教えてくれる。
「陽菜、大分、良くなってきたよ」
それは、オレの台詞だろう?
そう言いたい。
だけど、言えない。
なんでおまえなんだよ、と言えない。
ハルが志穂に会えて喜んでるなら、オレはそれを喜ばなきゃいけない。
……とは思えども、理性と感情は別モンだ。
「ずりーよ、志穂」
オレは机に突っ伏して、ため息を吐いた。
「なんで、おまえは会ってもらえるんだよ」
じとーっとオレが志穂を見上げると、志穂は気の毒そうに言った。
「……会ってもらえないの、叶太くんだけじゃない?」
「ひでー。おまえ、ホント、情け容赦ないな……」
八つ当たりだ。
そう分かっていても、ため息まじりに愚痴らずにはいられなかった。
「そんな可哀想な叶太くんに、羽鳥先輩から伝言あるんだけど」